Juliaを使ってみよう

Juliaについて

Juliaはかなり新しい科学技術計算専用の言語です.結構欲張った言語です.例えばC言語は,一般に計算は速く自由度も高いのですが,科学技術計算の観点からは文法が冗長だったり,そもそも設計が近代的ではないので勉強も実装も(特に初学者にとっては)それなりに大変です.一方で,Matlabのような科学技術計算専用言語は,変数の型を指定する必要がないなど勉強も実装も簡単(プログラムの長さも短くなるし,多くの関数が初めから用意されているので簡単に利用できます)ですが,C言語と比べて計算がものすごく遅くなったりすることもあります(2倍とか3倍遅くなるのではなく,100倍,1000倍...遅くなることもあります).

これらに対してJuliaは

という利点があります.ですので,これまでのC言語の学習があまりしっくりきていない人も心機一転頑張りましょう.一方で,C言語などに慣れている人にとっては,Julia(やMatlabやPython)の文法には違和感を覚えるかもしれません.とはいえ,型を指定するなどC言語に近い書き方をしてさらなる高速化を行うこともできたりしますので,勉強して損はない言語だと思います.

Juliaのインターフェース

Juliaには幾つかの使い方があります(降籏先生の解説も一読することをおすすめします).

まず,Juliaを起動すると以下のような画面がでてきますが,これを対話型セッション(REPL (read-eval-print loop))といいます.今回の講義のページはREPLでJuliaを体験することを想定しています.

               _
   _       _ _(_)_     |  Documentation: https://docs.julialang.org
  (_)     | (_) (_)    |
   _ _   _| |_  __ _   |  Type "?" for help, "]?" for Pkg help.
  | | | | | | |/ _` |  |
  | | |_| | | | (_| |  |  Version 1.6.1 (2021-04-23)
 _/ |\__'_|_|_|\__'_|  |  Official https://julialang.org/ release
|__/                   |

julia> 

次に,(この講義ではほとんど扱うことはないと思いますが)Juliaのプログラムを書いたファイル hoge.jl (Juliaのプログラムの拡張子は jl です)を cygwin や ターミナル から

$ julia hoge.jl

と実行する方法があります.

3つ目は,Jupyterというインターフェースを用いるものです.次のページで詳しく解説しますが,webブラウザ上でプログラミングをし,実行結果もwebブラウザ上に表示されるようなインターフェースです.(この講義で扱うような内容に関しては)上の二つの使い方よりもかなり便利に使うことができます(基本的に上の二つでも同じことはできますが使い勝手がかなり違います).

他にも,直近では Pluto といったインターフェースも登場しているようです.

文字列などの出力

文字列などを出力したいときには,print, println, @printf などを使います.

julia> print("ab") # 改行無し出力
ab
julia> print("ab\n") # \n は改行
ab

julia> println("ab") # 改行付き出力
ab

julia> a = [1,2,3]; # 配列 ← おそらく次回の講義で説明(ベクトルみたいなもの).また,セミコロンは無くてもよい.

julia> println(a) # 配列も出力できる
[1, 2, 3]

julia> x = 5;

julia> println(x)
5

julia> typeof(x) # x の型を確認
Int64

julia> println("x")
x

julia> println("x = $x") # 文字列内で計算
x = 5

julia> println("x + 3 = $(x + 3)") # 文字列内で計算
x + 3 = 8

julia> println("a = $a") # 配列も同様に.
a = [1, 2, 3]

# C のprintfのようなマクロ
julia> using Printf # パッケージ読み込み(Cのincludeに相当)

julia> @printf("pi = %.8f\n", pi)
pi = 3.14159265

関数の使い方を詳しく知りたい時,公式のドキュメント で調べたり,Julia println のようなキーワードでweb検索するのも良いですが,より手軽な次のような方法があります.

julia> 

この状態で ? を押すと

help?> 

となります.

ここで,例えば,@printf と書いてエンターキーを押すと

help?> @printf
  @printf([io::IOStream], "%Fmt", args...)

  Print args using C printf style format specification string, with some
  ...

のように,その関数の使い方が表示されます.ただし,println のようにパッケージ無しで使える関数はいつでも調べることができますが,@printf のように,Printf というパッケージが必要なものの場合,using Printf をせずに(すなわち,パッケージを読み込まずに)? をすると,

help?> @printf
  No documentation found.

  Binding @printf does not exist.

のようになるので注意しましょう.

if文

公式ドキュメントの例でみてみましょう.考え方はC言語のときと同じですが,文法だけがやや異なります.

(x,y) = (2,3)
if x < y
  println("x is less than y")
elseif x > y
  println("x is greater than y")
else
  println("x is equal to y")
end

これを実行すれば,

x is less than y

となります.x と y の値を変えて(大小関係や整数以外)試してみましょう.

for文とwhile文

まず,for文 の例をみてみましょう.

for i = 1:4
  print("i = $i, ")
end

とすると出力は

i = 1, i = 2, i = 3, i = 4,

となります.

また,

for i in [1,4,0]
  print("i = $i, ")
end

このような書き方をすれば出力は

i = 1, i = 4, i = 0, 

となります.

次に while文 の例をみてみましょう.

i = 1;
while i < 5
  println(i)
  i += 1
end

これを実行すると出力は

1
2
3
4

となります.

関数

例えば,1 から n までの総和を計算する関数 sum

function sum(n)
  x = 0
  for i = 1:n
    x += i
  end
  return x
end

のように書きます.使うときは sum(10) のようにすればよいです.

C言語のときとは異なり,引数や戻り値の 型を指定していない ことに注意してください.実は,型を指定することもできる のですが(その方が好ましいこともあります),このように,型を意識せずにプログラムを書けることが,Juliaの手軽さの一つといえます.型の指定の仕方については,Juliaに慣れてきた頃に説明します.

注意

C言語 等に慣れている人にとっては,型を指定しないことはとても気持ち悪く感じるかもしれませんが,これも言語の一つの特性だと思うとよいでしょう.なお,私が研究で Julia を使うときは,まずは,型をあまり意識せずにプログラム書き,だいたいできた段階で,計算時間やメモリ使用量といったパフォーマンスをチェックしながら,必要な箇所で型を指定したりしています.

数学関数

標準的な数学関数を利用するために,何らかのパッケージを読み込む必要はありません.

# 例
julia> exp(1)
2.718281828459045

julia> sin(pi/2)
1.0

ただし,線形代数の演算(例えば内積)などは,例えば LinearAlgebra といったパッケージを必要とします.これについては,必要になった時点で解説します.

再帰関数

Jilia でも再帰関数を定義できます.階乗の計算を行う fact 関数を再帰的に定義する場合,

function fact(n)
  if n == 0
    return 1
  else
    return n * fact(n-1)
  end
end

のように書きます.なお,julia にはデフォルトで factorial という関数が準備されています.この関数の定義の仕方が知りたいときは,公式のドキュメント の factorial の欄の右下にある source をクリックすることで確認できます.どうやら

function factorial(n::Integer)
    n < 0 && throw(DomainError(n, "`n` must be nonnegative."))
    f::typeof(n*n) = 1
    for i::typeof(n*n) = 2:n
        f *= i
    end
    return f
end

のように定義されているようです.for文 を使って定義されていますね.このように,組み込み関数(デフォルトで準備されている関数)の定義をみると勉強になることも多いです(プロが書いたものなので当然です).この factorial の例でも,例えば引数の型を整数型としたいときは n::Integer とすればよいことが分かります.

実は,上記の fact 関数 の定義は一行で

fact1(n) = n == 0 ? 1 : n * fact1(n - 1)

と書くことができます.fact1(n) = ...... の部分が関数の定義になっていることはイメージしやすいと思います.一方で,初見だと ... の部分が意味不明ではないでしょうか? 実は,a ? b : c というのは,

if a 
    b
else
    c
end

という意味です.実際に調べてみると,以下のように説明されています.

help?> ?
search: ? ?:

  a ? b : c

  Short form for conditionals; read "if a, evaluate b otherwise evaluate c".

配列

ベクトルや行列(さらにはテンソル)を扱うときには配列を利用します.縦ベクトルが一次元配列,行列が二次元配列に対応します.今の段階であまり気にする必要はありませんが,配列の要素は全て同じ型になります.

例を見てみましょう.

julia> x = [1,2,3]
3-element Array{Int64,1}:
 1
 2
 3

このように,[ ] で囲んで,カンマで区切れば,一次元配列(= 縦ベクトル)になります.

julia> x = [1;2;3]
3-element Array{Int64,1}:
 1
 2
 3

このようにセミコロンで区切っても同じ結果になります.

二次元配列(= 行列)は次のようにすればよいです.

julia> A = [1 2 3;
            4 5 6;
            7 8 9]
3×3 Array{Int64,2}:
 1  2  3
 4  5  6
 7  8  9

ここで,配列の要素は整数型です.なお,一つでも実数型にすると,例えば次のようになります.

julia> A = [1.0 2 3;
            4 5 6;
            7 8 9]
3×3 Array{Float64,2}:
 1.0  2.0  3.0
 4.0  5.0  6.0
 7.0  8.0  9.0

行列のベクトルの掛け算には次のように * を使います.

julia> A * x
3-element Array{Int64,1}:
 14
 32
 50

以下,幾つか重要な例を見てみましょう.

# 全ての値が0の配列
julia> zeros(2) # デフォルトはFloat64型
2-element Array{Float64,1}:
 0.0
 0.0

julia> zeros(Int64,2) # 型を指定したければこのように.
2-element Array{Int64,1}:
 0
 0

julia> zeros(Int64,2, 3) # 零行列
2×3 Array{Int64,2}:
 0  0  0
 0  0  0

# 全ての値が1の配列
julia> ones(2)
2-element Array{Float64,1}:
 1.0
 1.0

julia> ones(Int64,2)
2-element Array{Int64,1}:
 1
 1

julia> ones(Int64,2,3)
2×3 Array{Int64,2}:
 1  1  1
 1  1  1

# 一様分布でランダムに初期化した配列
julia> rand(2,3)
2×3 Array{Float64,2}:
 0.146656  0.330993  0.462748
 0.404141  0.318241  0.367632

# 正規分布でランダムに初期化した配列
julia> randn(2,3)
2×3 Array{Float64,2}:
 2.35716   1.44751   0.813044
 1.49665  -0.677559  0.467396

配列の要素は,A[i,j] のように取り出します.代入も同様です.

julia> A = rand(2,3)
2×3 Array{Float64,2}:
 0.718872  0.349552   0.10818
 0.13624   0.0399332  0.241702

# 要素の取り出し
julia> A[1,2]
0.34955168533252645

# 要素の代入
julia> A[1,2] = 1.0;

julia> A
2×3 Array{Float64,2}:
 0.718872  1.0        0.10818
 0.13624   0.0399332  0.241702

Juliaでは,配列のインデックスは 1 からはじまります.C言語など,他の幾つかの言語では,配列のインデックスは 0 からはじまるので,そのような言語に慣れている方にとっては,少し違和感を覚えるかもしれませんが,「Juliaではそういうルールなのだ」と思えば良いでしょう.

行列-ベクトル積

行列とベクトルの掛け算は,A * x のように簡単に書けるわけですが,もう少し注意深く考えてみましょう.\(A\in\mathbb{R}^{m\times n}\) と ベクトル \(x\in\mathbb{R}^{n}\) に対して,それらの積 \(Ax\) の第 \(i\) 成分は, $$ \sum_{j=1}^n a_{ij} x_j$$ ですから,\(y = Ax\) を計算したければ,

julia> A = randn(3,2)
3×2 Array{Float64,2}:
 -0.0770241  -0.0941118
  2.37894     0.198019
  0.681646    1.17241

julia> x = randn(2)
2-element Array{Float64,1}:
 -0.3890395113596626
 -1.0779098168822268

julia> y = zeros(3);

julia> for i = 1:3
           for j = 1:2
               y[i] = y[i] + A[i,j] * x[j]
           end
       end

とすればよさそうです.このとき,結果は

julia> y
3-element Array{Float64,1}:
  0.1314095002691501
 -1.1389493877360208
 -1.5289372130207397

となり,A * x の結果

julia> A * x
3-element Array{Float64,1}:
  0.1314095002691501
 -1.1389493877360208
 -1.5289372130207397

と確かに一致します.もっとも,二重になっている for文 の順番を入れ替えて

julia> z = zeros(3)
3-element Array{Float64,1}:
 0.0
 0.0
 0.0

julia> for j = 1:2
           for i = 1:3
               z[i] = z[i] + A[i,j] * x[j]
           end
       end

としても,やはり結果は

julia> z
3-element Array{Float64,1}:
  0.1314095002691501
 -1.1389493877360208
 -1.5289372130207397

となります.「数学的には同じなのだから当たり前ではないか!」と思われるかもしれませんが,実はちょっとした違いがあります.

簡単のために \(A\) は正方行列として,そのサイズを \(n=10000\) としましょう.行列 \(A\) とベクトル \(x\) を次のように初期化しておきます.

julia> n = 10000;

julia> A = randn(n,n);

julia> x = ones(n);

そして,行列ベクトル積を計算する関数を2つ準備しましょう.

julia> function matvec1(A,x)
           n = length(x)
           y = zeros(n)
           for i = 1:n
               for j = 1:n
                   y[i] += A[i,j] * x[j]
               end
           end
           return y
       end     
matvec1 (generic function with 1 method)

julia> function matvec2(A,x)
           n = length(x)
           y = zeros(n)
           for j = 1:n
               for i = 1:n
                   y[i] += A[i,j] * x[j]
               end
           end
           return y
       end
matvec2 (generic function with 1 method)

違いは,for文 の順番だけです.これらの関数を使って,行列ベクトル積を計算するときの実行時間を測ってみましょう.そのためには,@time というコマンドを使います.以下の結果は,実行する環境によって異なりますが,私のラップトップでは次のようになりました.(実行する度に計算時間は異なるはずですが,「1回目」は極端に遅い可能性があるので,2回目以降(何回やってもだいたい同じ)で比較してみるとよいでしょう)

julia> @time matvec1(A,x);
  0.773708 seconds (2 allocations: 78.203 KiB)

julia> @time matvec2(A,x);
  0.105140 seconds (2 allocations: 78.203 KiB)

外側に j のループがある matvec2 の方が圧倒的に速いですね.なお,* を使えば

julia> @time A * x;
  0.019867 seconds (2 allocations: 78.203 KiB)

のようにより高速です.matvec1matvec2 の違いは,配列の要素の格納の違いからきています.例えば,JuliaとC言語では \(5\times 5\) の配列の要素はそれぞれ次の順で格納されています.

matvec1 では,1, 6, 11, 16, 21, ... の順で飛び飛びにアクセスしているため,計算の時間も長くかかってしまっています.それに対して,matvec2 では,1, 2, 3, 4, 5, 6, ... という素直な順でアクセスしているため相対的に高速に計算ができているのです(同様な理由で,C言語の場合は,matvec1 のような書き方の方が高速に計算できます).

Jupyter のインストール

Julia の利用の仕方は色々ありますが,Jupyterというものを使うことがよくあります.この講義でも Jupyter を使って学習を進めていきます.Jupyter とは何かを説明するよりも,習うより慣れろ,の精神でさっそく導入してみましょう.なお,コンピュータやプログラミングに詳しい学生は,Jupyter のweb ページを参考に JupyterLab をインストールするのもよいでしょう.

Julia を起動し,

julia>

の状態で ] を一回押すと

(@v1.6) pkg>

となると思います(バックスペースを押すと元に戻ります)ここで,

(@v1.6) pkg> add IJulia

としてエンターキーを押しましょう(その後しばらく待ちます).そして,

julia>

に戻り,

julia> using IJulia

としてエンターキーを押しましょう(少し待ちます).そして

julia> notebook()

とすると,おそらくは

julia> notebook()
install Jupyter via Conda, y/n? [y]:

と表示されるので,y を押してエンターキーを押します.すると既定のブラウザ(もしくはどのブラウザで開くか聞かれたときは好きなものを選択)で次のようなページが開きます.
jupyter1

ここで,右上の 新規 (もしくは New) をクリックすると
jupyter2

のようになると思います.おそらく皆さんの環境では「Julia 1.6.0」と「Python 3」が表示されていると思います.左に Applications や Desktop といった項目がありますが(環境によって何が表示されるかは異なります),ここをクリックしていけば所望のフォルダにたどり着けるでしょう.例えば,Desktop にある test というフォルダに移動してみると(そのフォルダが空ならば)次のようになります.


jupyter3

ここで,「新規」から「Julia 1.6.0」をクリックすると,次のようなページが別ウィンドウで開きます.
jupyter4

これは,1+1 と書いてエンターキーを押したところの画面です.一番上の Untitled がファイルの名前になっていて,クリックすれば修正可能です.
jupyter5

ここで,1 つ目のページに戻ると,確かに,Test.ipynb というファイルが生成されていることが分かります.

jupyter6

ipynb は Jupyter を使うときの拡張子です.また,この画面で Test.ipynb をクリックすればさきほどの画面が開きます.

さて,サンプルファイルを用意してみました.Raw から,名前を付けて保存をクリックすれば Sample.ipynb というファイルをダウンロードできるはずです.ダウンロードできたら Jupyter で実行してみましょう.